QLC若手コロキウム

第9回QLC若手コロキウム

日時:2023年2月20日(月) 13:30~14:30
講演者:関根大輝(東北大学大学院理学研究科)、堀眞弘(東京理科大学大学院理学研究科)、計2名
※Zoomによるオンライン開催
※開催当日正午までに登録用サイトへ登録された方に、会議IDをお送りします

1)13:30~14:00
講演者:関根大輝(東北大学大学院理学研究科物理学専攻)
タイトル:MnTiO3中の多極子ドメインの実空間イメージング
アブストラクト:
 物質中の電荷や磁化の異方性を記述する多極子は、様々な物理現象をミクロな視点から統一的に記述できることから近年注目を集めている。多極子と物理現象の関係性が理論的に開拓されつつある一方、実験的には多くの多極子に関して直接観測する方法が確立されていないのが現状である。近年、それぞれの多極子に対して検出手法の開発が精力的になされていることからわかるように、多極子を直接検出する手法の確立が強く望まれている。
 我々はそのような現状に対して、対称性に敏感な光第二高調波発生(SHG)を用いて多極子の検出を試みてきた[1]。電気双極子近似のもとでは、空間反転対称性の破れた系においてのみSHGが発現することがよく知られている。しかしながら、電気双極子近似を超えた磁気双極子遷移などを含む高次のSHGを用いることで、空間反転対称性のある系においてもSHGが発現することが知られている。また、SHGは時間反転対称性の破れにも敏感であるため、磁気秩序のプローブとしても活躍する。以上のことからSHGは奇パリティ/偶パリティ、電気的/磁気的多極子を検出できる可能性を秘めている。
 今回我々は、対称性の観点から複数の多極子を同時に有すると考えられるMnTiO3に対してSHGによる多極子および多極子ドメインの検出を試みた。MnTiO3は結晶構造の対称性から、電気トロイダル双極子の存在が予想される。これは近年研究の進んでいるフェロアキシャル秩序とも関係が深い[2]。さらに、Néel温度65 Kで反強磁性転移を示し、空間反転対称性と時間反転対称性を同時に破る反強磁性秩序を示す。これは磁気単極子、磁気四極子、磁気トロイダル双極子に対応し、それらに起因する興味深い物理現象が観測されている[3, 4]。我々はMnTiO3に対しSHGイメージング測定を行うことで、電気トロイダルドメインおよび磁気的な多極子ドメインの可視化に成功した。本講演では、詳細な結果について最近の進展も含めながら議論する。

[1] D. Sekine, Y. Sato, and M. Matsubara, Appl. Phys. Lett. 120, 162905 (2022).
[2] T. Hayashida, Y. Uemura, K. Kimura, S. Matsuoka, D. Morikawa, S. Hirose, K. Tsuda, T. Hasegawa, and T. Kimura, Nat. Commun. 11, 4582 (2020).
[3] N. Mufti, G. R. Blake, M. Mostovoy, S. Riyadi, A. A. Nugroho, and T. T. M. Palstra, Phys. Rev. B 83, 104416 (2011).
[4] T. Sato, N. Abe, S. Kimura, Y. Tokunaga, and T. Arima, Phys. Rev. Lett. 124, 217402 (2020).

2)14:00-14:30
講演者:堀眞弘(東京理科大学大学院理学研究科応用物理学専攻)
タイトル:二次元準周期系におけるトポロジカル超伝導状態
アブストラクト:
 超伝導体において基底状態を構成する準粒子の波動関数がトポロジカルに非自明な状態であるトポロジカル超伝導状態に関して、これまで主に周期系における理論研究が行われてきた。周期系におけるトポロジカル超伝導では、系の端に局在するゼロエネルギーのエッジモードが実現される。一方、周期性は無いが長距離秩序が有る構造を持つ物質群である準周期系において、近年では磁気秩序や超伝導が観測され注目を集めている。
 我々はこれまで、二次元準周期系の代表例であるペンローズ準結晶およびアンマン・ビーンカー準結晶においてトポロジカル超伝導を数値的に考察してきた[1]。ラシュバ型のスピン軌道相互作用およびゼーマン型の磁気相互作用がある系において、ボゴリューボフ・ドジャン方程式を自己無撞着に[2]解くことにより、二次元準周期系におけるトポロジカル超伝導[3]を考察した。
 本講演では、二次元準周期系におけるトポロジカル超伝導の超伝導秩序変数や、そこで現れるエッジモードの性質について紹介する。系がトポロジカルか否かを判断するにはトポロジカル不変量を計算すればよいが、我々は準周期系にも適用可能なトポロジカル不変量を計算することで、二次元準周期系においてトポロジカル超伝導転移が実現することを確かめた。また、自己無撞着に実現される超伝導秩序変数は、準周期系が持つ回転対称性と鏡映対称性を反映した空間分布を持つことがわかった。さらに、二次元準周期系においてもゼロエネルギーのエッジモードが実現されることがわかった。

[1] M. Hori et al., to be submitted.
[2] S. L. Goertzen, K. Tanaka, N. Nagai, Phys. Rev. B 95, 064509 (2017).
[3] R. Ghadimi, T. Sugimoto, K. Tanaka, T. Tohyama, Phys. Rev. B 104, 144511 (2021).

担当:和達大樹(兵庫県立大学)