研究概要

「量子液晶」とは、量子力学的な効果により物質中に現れる液晶に類似した電子状態の新たな総称であり、液晶では分子自体が方向性を持つのに対し、量子液晶では量子力学的自由度により方向性が発現し、液晶状態を連想させる種々の特異な電子物性(スピン液晶、電子ネマティック秩序、対密度波など)を示す。本新学術領域では、既存の分野を超えた新しい連携研究により、「量子液晶」の物性を解明すること、またその制御を可能にすることを目的とする。特に、量子液晶の基底状態を解明するとともに、様々な量子液晶に現れる普遍性と多様性の基礎学理を探究し、さらに先端技術を駆使して量子液晶の素励起の解明と制御、柔軟に変化する液晶の特性と量子性による高速かつ巨大な応答を利用した将来の新技術への基礎を築くことを目指す。

 

 本領域では、研究の方法論により以下の4つの研究項目に分類・組織化し、異なる物質を主な対象としてきた研究者を各項目に配置することで、新しい融合研究を促進する。

[研究項目A01 量子液晶物質の開発]
新奇な量子液晶が具現する物質の創製
非自明な対称性の破れを伴う量子液晶状態を新奇物性発現の舞台として捉え、スピン配列が特異な対称性の破れを示すスピン液晶、異方的な電子状態が形成された電荷液晶、エキゾチック超伝導(電子対液晶)の開拓を推進する。具体的なターゲットとして、新しい金属絶縁体転移系・導電性マルチフェロイクス・室温量子液晶物質を掲げ、多彩な合成・評価手法を相補的に連携させることで、新物質探索を強力に進める。

[研究項目B01 量子液晶の精密計測]
物性を支配する量子液晶の実態解明
最先端の精密物性計測技術を糾合して、量子多体効果から生まれる豊富な物性と量子液晶の関係を解明する。電荷やスピンに感度を持つイメージング技術や量子ビーム回折による空間情報の取得、核磁気共鳴・ネマティック感受率などによる対称性の破れの検出、トンネル分光や量子ビーム非弾性散乱による素励起解明を、空間階層的、物質横断的に行う。また、量子液晶のダイナミクス解明のための時間空間分解能を持つ新規測定手法を開発する。

[研究項目C01 量子液晶の理論構築]
量子液晶に共通する概念の創出
多彩な量子液晶の根底にある普遍的な原理を解明し、量子液晶の学理の構築を目指す。量子液晶の特徴といえる電子がもつ複数の自由度(電荷・スピン・軌道)が絡んだ空間的に広がった秩序変数を、微視的理論に基づき導出する。また、量子液晶の制御理論を提案し、新奇な輸送現象や非平衡現象の理論を発展させ、さらに第一原理的手法を駆使して、量子液晶状態を実現する物質設計の理論に取り組む。

[研究項目D01 量子液晶の制御と機能]
量子液晶テクノロジー創出
高速巨大応答を生み出す素励起の実体を解明し、外場による量子液晶の素励起・配向性の制御を行い、機能を創出する。そのために、量子液晶物質のための微細加工技術・超高速電子顕微鏡・軟X線イメージング法といった先端技術を新規開発し、ナノサイエンスによる電気的アプローチと超高速光技術に基づく分光的アプローチを組み合わせ、特異な柔軟性を持つ電子状態の巨視的な性質の制御を実現する。