8/29(月)第32回QLCセミナーを名古屋大学(東山キャンパス)& オンラインにて開催

32回QLCセミナー

講師:石田浩祐 氏(Max-Planck-Institut für Chemische Physik fester Stoffe)
日時:2022年8月29日(月)10:30~
場所:名古屋大学(東山キャンパス)理学館506室、およびZoom を併用したハイブリット開催
※Zoomの登録用URLはこちらです。

タイトル:Criticality of Lifshitz transition in Sr2RuO4 probed by stress-strain relation ship

アブストラクト:
 一般にLifshitz転移ではフェルミ面のトポロジーが変化し、これは秩序変数で特徴づけられる通常の相転移と大きく異なる[1]。近年、非従来型超伝導体Sr2RuO4がこのLifshitz転移の理解を深める上でのモデル物質として注目を集めている。Sr2RuO4はその電子構造にVan Hove特異点を有しており、結晶軸の[100]方向に一軸応力を加えることでこの特異点がフェルミ面を横切るように制御しLifshitz転移を引き起こすことができる[2]。一軸応力は近年技術発展したクリーンな制御パラメータであり、これまでSr2RuO4のLifshitz転移点付近では超伝導転移温度の約1.5 Kから約3 Kへの上昇[3]や電気抵抗のフェルミ液体論から逸脱した振る舞い[4]などが観測されている。
 今回のセミナーでは、このSr2RuO4におけるLifshitz転移が弾性的性質に大きな影響を及ぼすことを紹介する。最近我々は新しく開発した一軸応力制御セル[5]を用い、試料を精密加工することによって単結晶試料に対する応力―歪み曲線の測定手法を確立した。Sr2RuO4に対して測定を行ったところ、4 Kにおいては応力―歪み曲線から得られるヤング率がLifshitz転移点に向かって約10%のソフト化を示すことが明らかになった。この結果をモデル計算と比較し、また最近の弾性熱量効果[6]の結果と照らし合わせ、Sr2RuO4のLifshitz転移の臨界性に関し主に熱力学的観点から議論を行いたい。

[1] I. M. Lifshitz, Sov. Phys. JETP 11, 1130 (1960).
[2] V. Sunko et al., npj Quantum Mater. 4, 46 (2019).
[3] A. Steppke et al., Science 355, eaaf9398 (2017).
[4] M. E. Barber, A. S. Gibbs, Y. Maeno, A. P. Mackenzie, and C. W. Hicks, Phys. Rev. Lett. 120, 076602 (2018).
[5] M. E. Barber, A. Steppke, A. P. Mackenzie, C. W. Hicks, Rev. Sci. Instrum. 90, 023904 (2019).
[6] Y.-S. Li, et al., Nature 607, 276 (2022).

担当:紺谷浩(名古屋大)