12/15(Wed.)The 30th QLC seminar at Kashiwa campus, The University of Tokyo

The 30th QLC seminar

Speaker:Taiki MATSUSHITA (Osaka University)
Date & Time :Wednesday,  December 15, 2021. 16:00~18:00
Place:Daikougisitu, Kibanto, Shin-ryoiki, Kashiwa Campus, The University of Tokyo (東京大学 柏キャンパス 基盤棟大講義室)
※If you wish to join this seminar, please mail to Prof. Shibauchi ( shibauchi[at]k.u-tokyo.ac.jp ).

Title:トポロジカル超伝導における温度勾配により誘起される外因性異常輸送現象

Abstract:
 トポロジカル超伝導の候補物質は数多くあり、これまで多くの研究がされてきた。しかし、未だ確立されたトポロジカル超伝導物質は(超流動3He-B相以外には)存在しない。その理由の一つは、トポロジカル超伝導に存在する超伝導秩序変数のプローブがごく少数に限られていること にある。特に、時間反転対称なトポロジカル超伝導固有の物理現象は明らかにされておらず、そ のことが候補物質におけるトポロジカル超伝導の立証を困難にしてきた。
 時間反転対称性を破ったトポロジカル超伝導の基本はカイラルCooper対である。カイラル Cooper対の軌道⾓運動量は特定⽅向に固定されており、基底状態の時間反転対称性を破る。カイラルCooper対が⼆次元で実現すると時間反転対称性が破れたトポロジカル超伝導、三次元で実現するとWeyl超伝導が実現する。カイラルCooper対が引き起こす輸送現象として、異常熱Hall効果が知られている。異常熱Hall効果の起源としてはBerry曲率に由来した内因性効果[1]、不純物散乱に由来した外因性効果[2]の⼆種類が知られている。後者の外因性異常熱Hall効果は、外場によって駆動された準粒⼦が⾮対称に(特定⽅向強く)散乱されることに由来する[3]。この⾮対称散乱 の起源はカイラルCooper対にあり、カイラルCooper対を介した不純物散乱は準粒⼦を⾮対称に散乱し、温度勾配と垂直⽅向に熱流を誘起する異常熱Hall効果を引き起こす。
 ⼀⽅、時間反転対称なトポロジカル超伝導に存在するCooper対はヘリカルCooper対(あるいは 異なるヘリカルCooper対状態の重ね合わせ)である。ヘリカルCooper対は時間反転対称操作で移 り変わる2つのカイラルCooper対の重ねた合わせである。我々は、時間反転対称なトポロジカル 超伝導の温度勾配を研究し、ヘリカルCooper対を介した不純物散乱がどのような輸送現象を引き 起こすかに着⽬して研究を⾏った。解析の結果、温度勾配で準粒⼦を駆動すると、不純物が準粒 ⼦をそのスピンに依存して⾮対称に散乱し、温度勾配と垂直にスピン流を誘起するスピンNernst 効果を引き起こすことが明らかとなった。この現象をトポロジカル超伝導候補物質で観測することで、トポロジカル超伝導に存在するヘリカルCooper対を⽴証することができる[4]。
 時間反転対称なトポロジカル超伝導におけるスピンNernst効果は、時間反転対称性を破った⾮ ユニタリ超伝導状態に拡張することができる。⾮ユニタリ超伝導状態はCooper対がスピン分極を持つ超伝導状態で、しばしば強磁性超伝導体で実現する[5]。⾮ユニタリ超伝導状態における温度勾配応答を議論し、スピンNernst効果の定量的な指標はCooper対のスピンカイラリティであることを⽰す。最近、⾮ユニタリ状態が持つCooper対のスピン分極が引き起こす物理現象として、スピンSeebeck効果を明らかにしたので、それについても議論する[6]。

[1] H. Sumiyoshi and S. Fujimoto J. Phys. Soc.Jpn. 82, 023602 (2013).
[2] B.Arfi, H. Bahlouli, C. J, Pethick and D. Pines Phys. Rev. Lett. (1988). TM, N. Kimura, T. Mizushima, I. Vekhter and S. Fujimoto inpreparation.
[3] H. Ikegami, Y. Tsutsumi and K. Kono Science 341, 59‒62 (2013).
[4] TM, J. Ando, Y. Masaki, T. Mizushima, S. Fujimoto and I. Vekhter arXiv:2110.00463 (2021).
[5] V. P. Mineev Phys. Rev. B 66, 134504 (2002).
[6] TM, Y. Masaki, T. Mizushima, S. Fujimoto and I. Vekhter inpreparation.

Committee Chair :Takasada SHIBAUCHI(The University of Tokyo)